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Orbital Insight GO を使ってコストコ木更津店の経済効果を探った。判明したことをまとめる

執筆:Solution Engineer 新井康平

1. はじめに

前回私が執筆した記事を読んでくださった方、ありがとうございました。
まだ読まれていない方は是非読んでください。

前回は弊社プロダクト「 Orbital Insight GO 」について機能をまとめておりました。
今回の記事では実際にプロダクトを使って分析を行ってみようと思います。
地理空間情報分析にご興味のある皆さまに、弊社のプロダクトをどのような分析テーマに用いることができるかご理解いただけますと幸いです。

注記事項として本記事は学術的な内容ではございません。また、このような施策効果分析の専門家でもございませんので、試算内容の正確性を保証するものでもありません。どのような分析に弊社データが利用可能かをご理解いただくために読んでいただけますと幸いです。

ご意見やフィードバックなどあればページ最下部にリンクのある執筆者までご連絡ください。

2. 問題設定

突然ですが、みなさんはコストコ(英名: Costco )をご存知でしょうか。

アメリカ発祥の大型小売店で日本国内には30店舗存在します。(2021年7月8日現在) *1

私はコストコの食材の品揃えが好きで月に2回は食材を求めて行っております。
車で行くことが多いですが、どの道中もコストコに近づくにつれて混雑していたように感じられ、またコストコが建てられた周辺には施設が増えてく傾向があるように感想を持っておりました。そこで私には下記の問いが浮かんできました。

「コストコを誘致・建設することは周辺地域の消費活動にどの程度寄与するのか」

仮説としては、コストコができる前後で検知される車両の数や人の数が大幅に増加するのではないか考えています。上記の仮説を検証するために「 Orbital Insight GO 」を使用して分析していきます。

今回分析を行う対象店舗は2020年7月30日にオープンしたコストコ木更津店とします。
周辺地域の定義としてざっくりコストコ木更津店を含む下記のエリアを対象とします。
コストコ木更津店を含む1km四方程度のエリアです。

3. 分析結果・示唆

結論としては、該当エリアにおいて年間で40〜270億円程度の消費が喚起されているのではないかという結果になりました。

コストコを誘致すると近隣エリアにおいて車両台数を1日平均で381台増加(+51.3%)、推計された人数を10,950人(+194.4%)増加させる効果があるということがわかりました。
データの妥当性は検証が必要ですが、車両台数や人の数も地域経済と相関するといわれております。具体的にコストコを含めてどの程度の金額が発生しているか、簡単ですがGPSデータの結果を使用して下式で計算してみます。

■ 計算式1
1日あたりエリア内消費総額
= エリア内で検知された人数 × 1人1日当たり消費額(1世帯1日あたりの消費額 / 世帯あたり人数)
= 10,950人 × 1,006円 ( 235,450円 ÷ 90日 ÷ 2.6人 )
= 1,1015,700円

総務省の最新消費支出*2より3ヶ月で1世帯の消費額が235,450円 、千葉県の世帯あたり人数が2.6人*3らしいので1人1日あたりエリア内消費総額は約1,006円です。
推計人数で10,950人増加しているため、少なくとも1日あたりエリア内消費総額が約1,102万円、年間365日とすると40億円程度は増加していそうです。

上記の算出式だと一人当たりの消費額が少なすぎる気がするのでコストコの消費額を別に切り出して下記の計算式でも算出してみます。世帯あたりコストコの消費額データはこちらのアンケート*4を参考にして、平均15,000円と仮定しました。

■ 計算式2
1日あたりエリア内消費総額
= エリア内で検知された世帯数 × 世帯あたりコストコ消費額 + 上記計算式1の結果
= 4,211世帯 (10,950人 / 2.6人) × 15,000円 + 1,1015,700円
= 74,188,776円

こちらの計算式に基づくと1日あたり該当エリアで約7,419万円、年間365日とすると270億円程度の経済効果は発生していそうです。計算結果に幅がありますが肌感覚としては計算式2の方が近そうな印象を受けます。
以下ではそれぞれのアルゴリズムの分析結果を紐解いていきます。

【車両台数】

まずは車両数のカウントを見てみます。コストコ木更津店は2020年7月30日にオープンしたので、該当期間を含む分析対象期間は2018年4月〜2021年9月までとします。

分析結果は下記の通り、サンプル数が少なく季節性なども考慮していないものの、コストコオープン前に検知されている1日あたり平均車両数は742.5件に対してオープン後は1,123.5件と差分が+381件(約51.3%増)ということがわかりました。

衛星画像は雲などに阻害されて全エリアが取得できていないことがあるので、どのような衛星画像が該当期間に検知されたかを確認してみます。下記の画像だときちんと全エリアが含まれていることがわかります。

 コストコオープン前(2018年9月28日)        コストコオープン後(2021年4月20日)

左の衛星画像はコストコオープン前の画像で、右の衛星画像はオープン後です。
コストコが建てられた場所において多くの車両が検知されていることがわかります。

【GPS】

今回使用した衛星画像はサンプル数が8件と少なかったため、GPSデータも使って分析してみます。弊社のGPSを使った人流分析は Normalization (標準化) という処理を行っており、実際に検知されたGPSの数からそこにいる人数を推計しており、本分析ではそのデータを使います。

早速分析結果に移ると下図の通り、コストコオープン前に検知されている平均は5,630件に対してオープン後は16,580件と差分が+10,950件(約194.4%増)ということがわかりました。

余談ですが、下図からわかるようにコストコは平日と休日で客数がかなり違うように見えます。
今後、平日/休日のコストコ内の人数を分析してみるのも面白そうです。
当たり前ですが人混みを避けたく、平日にwも行ける方は平日に行くのがおすすめです。
私は平日には行けないので休日に行きます。

それでは具体的にどこに人が集まっているのかコストコオープン前後で見てみます。
弊社のGPSデータを使った分析では対象エリア内でどこに人が集まっているのかを可視化することができます。

       コストコオープン前                  コストコオープン後

こちらの図では色の濃淡で人数の多寡を表しており、オープン前と比べてやはりオープン後には特に店内で多くの人のGPSが検知されていることがわかります。

4.おわりに

弊社のデータを使用して簡単にコストコができる前後の車両や人の量を算出してみましたが、
いかがでしたでしょうか。

結論としては仮説通り、コストコが建てられた後には車両台数も推計人数も増加しており、コストコを含めた近隣エリアでの消費額も年間で40〜270億円程度に達するのではないかという結果になりました。(繰り返しになりますが本記事は学術的な内容ではありませんし、試算結果の正確性を保証するものでもございません。)

今回は単純にコストコオープン前後の平均車両数や推計人数を比較しましたが、財務諸表のデータなども組み合わせてコストコの売上を予測する回帰分析を行い投資判断に使ってみたり、コストコの来店人数を予測する回帰モデルを作成して混雑が避けられそうな日時・時間帯に行ったりすることもできるかと思います。

弊社は衛星データ分析のみではなく、GPSを使った分析やAIS(自動船舶識別装置)を使った分析も行っており、1つの統合的なプラットフォーム上で分析を行うことが可能です。
弊社のデータの使い道の一つとしてご認識いただければと思います。


【参考・出典】
 *1. https://www.costco.co.jp/AboutCostco
 *2. https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.html#tsuki
 *3. https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/sokuhou/04.html
 *4. https://costcotuu.com/20180607/post_103760.html

【お問い合わせ】
 https://jp.orbitalinsight.com/#contact

【執筆者】

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