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防衛とインテリジェンスにおける地理空間分析の役割

地理空間分析は、インテリジェンス・アナリストの業務の質を高め、国家安全保障の強化に役立つとともに、国家の防衛能力を根本から変革するものです

AI(人工知能)と高度な分析アプリケーションにより、生産活動のスループット、効率性、安全性および信頼性は向上しました。また、金属・鉱業、化学などの重工産業では、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた一連の取り組みに、コネクティビティ、自動化、データアナリティクスを追加しています。公共部門においてAIが果たす役割は、どのようなものなのでしょうか? デジタル化は、航空宇宙および防衛関連企業の業務、特に重要な防衛サプライチェーンにいかなる影響を与えるのでしょう? さらには、軍事・防衛コミュニティおける AI の登場によってイノベーションに拍車がかかり、戦場での戦略的優位を確立することが可能になるのでしょうか? 

業界のデータによると、航空宇宙および防衛領域の企業は、デジタル化の取り組みをさらに強化する必要があることは明らかです。エビデンスとして、デジタル化された柔軟なサプライチェーンを持つ企業はパンデミック下でも生産の遅延が少ない、という実例も増えています。しかし、防衛産サプライチェーンは、供給ショックに対応する準備は整っているのでしょうか? 残念ながら、答は「NO」です。(米国の)議員たちが、サプライチェーン・セキュリティを戦略的な優先事項として扱うよう、(??当局、政府??に)圧力をかけているのも当然です。

サプライチェーンの透明性やトレーサビリティーにとどまらず、AI は防衛領域において膨大な可能性を秘めています。ひとつ例を挙げると、空挺情報・監視・偵察(ISR)セクターがあります。ボストン コンサルティング グループの最近のレポートによると、ISR は防衛産業の中でもっとも成長が急速な分野のひとつです。この状況を受け、軍の要件を満たす新たなプラットフォームが登場しています。

防衛・インテリジェンスのための AI

防衛・インテリジェンス業界では、専任のアナリストが地球観測衛星から送信される画像のモニタリングを行っています。インテリジェンス・アナリストは、インサイト(知見・洞察)を求めて複数のデータソースを同時に監視するため、「データの洪水」に溺れがちです。インテリジェンス・アナリストはさらに、AOI(関心領域)に応じ多数の変数を確認せねばなりません。例えば、イメージ(画像)・アナリストは、毎日、ほぼ同じ時間に同じ場所を撮影した何百もの衛星画像のサンプルを注視し、普段と異なる変化を発見したり、新たなオブジェクトを見つけたりします。また、ISR 技術の普及に伴い、偵察機、UAV、高高度気球、画像・SAR 衛星などから大量のデータが送られてきます。したがって、イメージ・アナリストが手作業で分析することは、もはや限界となっています。既知の場所を常時モニタリングし、活動実態(Pattern of Life: POL)に変化が生じた場合はアナリストにアラート通知が送られる、オートメーションツールが必要なのです。

インテリジェンス(諜報)活動や軍事活動には、データの管理、レビュー、分析のためのスケーラブルで堅牢、かつ高性能な環境が欠かせません。また、軍事アナリストは、任務中の業務をより効果的に遂行するために有用なツールを求めています。状況を素早く分析すると同時に、刻々と変化するデータをもとに異常を検知し、早急に対応するべきパターンを特定せねばならないのです。そこで役立つのがAIです。コンピュータービジョン(CV)のアルゴリズムが作業負荷を担い、何千もの画像を分析。変化を検出し、アナリストに自動的に通知します。

適切な地理空間プラットフォームがあれば、衛星画像の自動分析は地球上のどこでも大規模に行えます。AI を搭載した分析プラットフォームなら、データの前処理とクレンジングを行い、物体検出、異常検出または予測分析に関連するアルゴリズムを適用することができるため、アナリストのデータサイエンス・ワークフローが簡素化されます。軍事・防衛の分野で AI、位置情報分析ならびに CV の融合が実現したことで、標的検出や空軍基地のモニタリング、広域活動監視といったユースケース(活用事例)が大幅に増加する可能性が開けたのです。

AI の課題

さて、公共部門における AI や機械学習(ML)の応用は、その有用性を期待されるものの、様々な理由から難しい面もあります。というのは、モデルの精度や解釈性に不安があるからです。革命的な新テクノロジーには、それ相応の問題がつきものです。とはいえ、技術は時間とイテレーションを経ることで改善されていきます。また、AI にはデメリットを上回るメリットがあります。分析のエキスパート(専門家)が、AI の力を借りて業務の正確性と効率を上げているのです。目指すところは、アナリストを AI で置き換えるのはなく、インテリジェントなツールによって、人間のパフォーマンスを増強することです。考え方としては、反復作業や多数のエリアを監視する技術、物体検出(アナリストは自動アラートを受け、都度、調査が可能)のためのアルゴリズムに対し、オートメーションを適用するというものです。また、「説明可能な AI(Explainable AI)」によって、ドメインエキスパートはデータサイエンスのプロセスを理解し、モデルの仕組みを説明できるようになります。

実用的な知見

防衛インテリジェンスや軍事的なニーズに合わせて設計・構築された、AI 搭載の地理空間プラットフォームは、アナリストの生産性と効率性を高めることができます。人間参加Human-in-the-Loop)型というパラダイムに基づき構築されたコラボレーション・システムがあれば、インテリジェントな自動化の「効率性」と、対象分野のエキスパートの「知識」という双方の特長を同時に得られます。このアプローチでは、アナリストは自身のドメインの専門知識を生かし、関連性のある事実を提供することでデータを強化するとともに、AI システムをトレーニングすることができます。そして、システムは最新のコンピュータビジョン・アルゴリズムを使用し、リアルタイムデータにみられるパターンを特定し、異常検知を行い、アナリストがそのインサイト(知見・洞察)をもとに行動をとることを可能にします。このプラットフォームは、抽象化レイヤーによって使い方を簡素化し、(ユーザーに)複雑さを感じさせず、機能エンジニアリングを自動化。その他、データサイエンスのプロセスにおける煩雑なステップも、シンプルにします。また、ブラックボックス型の AI とは異なり、このプラットフォームでは内部構造の詳細がわかるため、(AI)モデリングの過程が透明化されます。さらに、説明可能な AI は、データサイエンスのワークフローに関する知見を提供するため、アナリストはモデルを説明し、SME(Subject Matter Expert、内容領域専門家)はどのプロセス変数が結果に影響するか、理解することができます。センサーに依存しない地理空間プラットフォームは柔軟性のある分析が可能なため、複数のデータソースに対応し、また、インテリジェンス・エキスパートが業務を遂行しやすくします。

米国の政府、軍、法執行当局は、地理空間ソリューションを使用すれば、AI を生かして各種状況の分析、異常検知、世界中の脅威を視覚化することができます。Orbital Insight GO のプラットフォームは、衛星画像、匿名化された位置情報データ、船舶の AIS データ、その他の IoT データといった複数の地理空間データソースを、様々な「質問」に対する客観的な「回答」へと「変換」します。例えば、サプライチェーン、地政学的な出来事、軍事行動についての質問です。Orbital Insight の使命は、地球上で何が起きているのかを理解し、情報機関の業務遂行能力を増強することです。この惑星上のどこであれ、実用的な知見の提供により、インテリジェンス・アナリストや防衛アナリストがさらに能力を発揮できるようにすることは、きわめて大きな戦略的優位性の確立につながります

地理空間分析について、そして、これが軍の情報収集能力の向上や防衛サプライチェーンのレジリエンス(回復力)の構築にいかに役立つのか、ご興味はわきましたか? ぜひ、こちらで詳細をご覧ください。

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