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東京港最大の埠頭、大井埠頭に停泊する船を Orbital Insight GO の最新アルゴリズムを使って検出してみた

執筆:Solutions Engineer 新井康平

はじめに

前回アウトレットを分析した記事を読んでくださった方々、ありがとうございます。
まだ読む機会がなかった方々は是非読んでください。


今回の記事では弊社が昨年12月にプレスリリースに発表した*1衛星画像を使った物体検出アルゴリズムの一つ「 Multiclass Object Detection for Ships (マルチクラス船舶分類) 」をご紹介したいと思います。その名の通り、画像内に存在する船舶を検出・分類するアルゴリズムです。

以前自分が執筆した記事にも書かせていただきましたが、従来までの Orbital Insight GO でも衛星画像から船舶を検知することができました。ただ、下記の画像からわかるように船舶の種類まではわからず、船舶を検出するアルゴリズムでした。


(従来の Orbital Insight GO の船舶検知アルゴリズム)

その後、お客様から船舶をより細分化した分類(サブクラス)を求められることが多く、また高い分解能を持つ衛星の発展にも後押しを受け、マルチクラス船舶分類アルゴリズムが開発されました。実装されたアルゴリズムでは船舶を7つの種類(大型貨物船・航空母艦・軍艦・潜水艦・クルーズ船・タグボート・その他の船舶)に分類することが可能です。

使用するデータセットとしては Planet Labs 社の SkySat という衛星から取得できる衛星画像を使っております。詳細な説明は割愛しますが、高頻度かつ高い分解能(0.5m)で画像を撮影可能な衛星コンステレーション(多数の人工衛星を協調して動作させる運用方式)です。

一般的な説明はプレスリリースにもありますので今回の記事では、実際にどんな船舶が検出できるのかをみていければと考えております。弊社プロダクトが扱っているデータ・アルゴリズムの一部をご理解いただけますと幸いです。ご意見やフィードバックなどあればページ最下部にリンクのある執筆者までご連絡ください。

問題設定

今回ご紹介するアルゴリズムは元々軍事関連のニーズから生まれており、ユースケースも同様に国防・情報参謀の用途が多いですが軍艦や航空母艦・潜水艦を検出してしまうと問題になりかねないので今回は問題のなさそうな場所を対象に分析を実行します。
ここでは昨今のコンテナ船需要の高まりから、コンテナ船を検出したいと思い立ち、検出できて何が嬉しいのかは一旦置いておいて下記の問いに答えるような分析を行えればと思います。

「大井埠頭に存在する船は Orbital Insight GO の新しいモデルで検出できるか」

大井コンテナ埠頭は全長2,354m、連続7バースの大水深岸壁を有しその規模は世界有数らしいです。*2 ここには複数の船舶が集まっていると思われるのでこちらを対象に検出を行っていきます。分析対象の場所は大井埠頭の7つのバースが網羅される下記に設定します。

対象期間は2016年4月1日〜2021年12月31日までとします。

分析結果・示唆

結論から言うと大井埠頭に停泊するコンテナ船と思われる船は精度高く検出することができるとわかりました。また専門的な内容になってしまいますが、今回の検出結果で「大型貨物船」クラスの精度を検証したところ、True Postive: 100件、False Positive: 16件、False Negative: 20件であり、再現率は0.83、適合率は0.86、F1スコアは0.85でした。
分析の目的や要件によっても求められる指標は変わってくると思いますが、高い精度と言えるのではないでしょうか。

以下では簡単に検出されている船舶例をご紹介します。

【全ての船舶が正しく検出できている例(紫:大型貨物船 水色:その他の船舶)】
各バースに船舶が停泊しており、「大型貨物船」として検出されていることがわかります。また、小型の船が「その他の船舶」として検出されていることもわかり、人間の目でも7件検出できるうち7件全てが検出されていることがわかります。

(2018年10月12日撮影)

【一部の船舶を検出できていない例】
目視で確認すると7隻存在する船舶のうち、5隻は正しく大型貨物船として検出されている一方で、左上に存在する1隻と右下に存在する1隻が検出できていないことがわかります。

(2019年6月13日撮影)

また下記の画像では雲に阻害されて正しく船舶が検出できていないことがわかります。

(2016年10月12日撮影)

【一部の船舶を誤検出している例】
目視で確認すると1隻しか船舶が存在しないのですが、バースの一部が船舶と似た特徴を持っており大型貨物船として検出してしまっていることがわかります。

(2020年4月26日撮影)

おわりに

弊社の最新のアルゴリズムを使用して大井埠頭に存在する船舶を検出してみましたがいかがでしたでしょうか。新しいアルゴリズムを使うと大井埠頭に停泊する船舶は精度高く検出することができたと言えるのではないでしょうか。

今後撮影頻度が上がり、安価な画像が取得できるようになるとコンテナ船数とその後の株価の相関を見ることで投資判断に利用できる可能性などもあり、利用範囲が拡がっていくかと思います。

船舶の動向を知るためにはAIS(自動船舶識別装置)データなども利用できると思いますが、AISデータが切られている船舶やより船舶の形や色が知りたい場合には衛星画像が利用できる場合もあるかと思います。弊社のデータの使い道の一つとしてご認識いただければと思います。

【参考・出典】
*1.https://orbitalinsight.com/news-and-events/press-releases/orbital-insight-unveils-multiclass-object-detection-algorithms-for-ships-aircraft-and-vehicles
*2.https://www.tptc.co.jp/guide/oi/about


【お問い合わせ】
 https://jp.orbitalinsight.com/#contact

【執筆者】

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