2021年2月に日本の経済産業省は2030年までにアンモニア燃料の使用量を年間300万トンに引き上げる目標を掲げました。
アンモニアは現在肥料などに使われていますが、燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しないため、火力発電に利用して脱炭素化を図ることができると考えられています。
2050年の脱炭素化目標達成に向けた取り組みの一環として、石炭火力発電所での両立技術の確立し、代替燃料の市場とサプライチェーンの開発に取り組むとありました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF056440V00C21A2000000/
この動きは、菅義偉首相が2050年までに炭素排出量をゼロにするという公約を掲げた後、昨年12月に発表されたグリーン成長戦略の下でクリーンエネルギーの開発を推進する政府の後押しの一環として行われたものです。
現在、日本が使用しているアンモニアの量は108万トンで、肥料と工業用資材のみで、その8割は現地で生産されています。
そのため、現在の発電所の発電量をキープしながら化石燃料に一部を置き換えるとなると、大量のアンモニアが必要となり、国内だけでなく国外からアンモニア燃料を仕入れるための国際的なサプライチェーンの構築が必要になってくるかと思われます。
同月には、東京電力ホールディングスと中部電力が出資するJERAが、マレーシアの国営石油大手ペトロナスと提携し、アンモニアだけを燃料とする発電設備を稼働するという発表もありました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ05C4L0V00C21A2000000/
以上のことから低炭素アンモニアの生産システム、生産された低炭素アンモニアを日本に安定供給し、発電所の燃料として利用するサプライチェーンの効率は今後も重要になってくるかと思われます。
Orbital Insight GOでは、以前のパーム油のサプライチェーンの可視化のソリューションを応用し、様々な資源や物流を可視化することができます。
また、パーム油のケースでは主に陸地でのサプライチェーンの可視化でしたが、同様に海上(海)のサプライチェーンの可視化と数値化することで、アンモニアのような国際的なサプライチェーンを紐解くことが可能です。
海のサプライチェーンの可視化
ここでは2つの代表的な海外アンモニア(その他肥料原料など)の輸出ターミナルからのサプライチェーンを例として可視化します。
インドネシア・ボンタン島 — P.T. Kaltim Pasifik Amoniak
1つ目はインドネシアボンタン北部に位置するP.T. Kaltim Pasifik Amoniak所有のアンモニアエクスポート・天然ガスターミナルです。
資源が豊富なインドネシアを起点とし、主にAPAC地域に輸出を行っています。日本へも関係があるのではないかと思い選択しました。
Orbital Insight GOを使い、対象のターミナルのマリンローディングアーム周辺をAOIとして選択し、2020年10月から12月までのAISデータを取得しました。
その取得したAISデータを+30日後までの軌跡を全世界にマッピングします。データ分析自体は数十分で結果を得ることができました。
結果、特にサプライチェーンが濃く出たのがインドネシア・クタ、フィリピン・マニラ、シンガポール、オーストラリア、香港、韓国、そして日本の仙台とまで船の行き来があることがわかりました。
全世界にマッピングしたものの、インドネシアからのサプライチェーンは主にAPAC地域に限っていることもわかりました。
ウクライナ・オデッサ港 — Odesa Port Plant
オデッサ港は、オデッサ近郊に位置するウクライナ最大の港であり、黒海流域最大の港の一つです。
その港に面するOdesa Oort Plantはアンモニア、尿素およびその他の化学副産物の生産であし、他の企業がウクライナやロシアから製造したアンモニア、尿素、メタノール、UANなどの製品の積み替えと輸出をしています。
こちらも同じ用に対象のターミナルのマリンローディングアーム周辺をAOIとして選択し、2020年10月から12月までのAISデータを取得しました。
結果得られた全世界へのサプライチェーンが下記のように可視化されます。
黒海から発着する船のサプライチェーンは、地中海に出て、西は南米大陸のトリニダード・トバゴ共和国まで伸びており、更に東はスエズ運河を通ってシンガポールまで伸びていることがわかります。
先程のインドネシアからのサプライチェーンと比較すると、ヨーロッパ・アフリカ・中東へ主に行き渡っていることがわかりました。
複雑な海上のサプライチェーンを可視化する
今回の代表的な2つのアンモニア(その他LNGや肥料原料)のサプライチェーンを一緒に可視化すると、それぞれの特徴やカバーしている地域がより理解しやすくなります。
こうしてみるといかにシンガポールがアジアと中東ヨーロッパのハブとして機能していることもわかります。
今回は2箇所でしたが、実際は無数のターミナルから日々サプライチェーンは展開しており、今後の国際的なサプライチェーン市場や状況の把握や、新しいサプライチェーン開拓などの分析に利用できるのではないでしょうか?
Orbital Insight について
Orbital Insight は地理空間分析を専門とする企業です。企業や組織のお客様が、地球上で、また地球そのものに何が起きているのかを理解できるよう、ご支援を提供しています。ユニリーバ (Unilever)、エアバス (Air Bus)、RBC キャピタルマーケッツ (RBC Capital Markets)、世界銀行 (The World Bank)、米国防総省 (U.S. Department of Defense) を始めとするお客様が Orbital Insight のセルフサービス分析プラットフォームを利用し、サプライチェーンの脆弱性やビジネス機会から国家安全に至るまで、様々な領域に関する知見を獲得されています。Orbital Insight は米国カリフォルニア州パロアルトに本拠を置き、セコイヤ (Sequoia) 、GV(旧 Google Ventures)、シェブロン (Chevron)、バンジ (Bunge) などの出資を得ています。