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日本国内のEV車走行経路の分析|EV充電スタンドのスポット選定へ

現在、カーボンニュートラル社会への流れがますます加速しており、各国の政府からの補助金や税制優遇などを受けて、欧米や中国ではEV車の利用が拡大していますが、日本国内では長らく停滞していました。その大きな理由の一つに充電設備の不足があります。

ゼンリンの調べによると、2021年3月末時点で日本国内の充電スタンドの設置数は約2万9000基。また、国際エネルギー機関(IEA)の発表によると、欧米で35万基や中国で約115万基の充電スタンドが設置されており、日本に比べてはるかに充電設備の普及が進んでいることがわかります。

日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、走行時に温室効果ガスを排出しないEV車の導入を加速させるために、

2021年6月に2030年までに充電スタンドの数を15万基設置するという目標を示しています。

今後、日本でEV車を普及させていくには最適な場所にEV車用の充電設備が必要不可欠かと思いますが、そのためにも現状どういった場所で特にEV車が利用されているのかを補足することで、効率よく迅速に充電設備の拡充を進められるのではないかと考えています。

今回の分析では、Orbital Insightのプラットフォームを使い、日本国内のEV車の走行経路を分析し、EV車が特に使われているようなエリアを特定する取り組みを実施しました。

分析手法

今回は日本の匿名化されたGPSデータとOrbital Insightの機能の一つでもある「Traceability」(匿名化されたGPS群の前後軌跡を取得する)アルゴリズムを利用して分析を行いました。

その軌跡の対象となるデータは、下記のようなEV充電スポットに止まっていたGPSを対象とします。携帯から発せられるGPSですが、場所を下記のように特定することで、基本的にEV車を運転している対象のGPSだけを分析対象と限定することで間接的にEV車の限定をします。

EXPASA海老名(上り・下り)のEV車充電スポット(赤エリア)

更に、EV車から降りた時などのデータはEV車の軌跡ではないため、Orbital Insightの設定の一つにGPSの速度をフィルタリングする機能があるため、速度を10キロ以上200キロ以下に限定しました。

軌跡の期間としては、EV充電スポットを立ち寄った前後24時間を取得します。GPSを取得する期間は2022年10月から2023年1月10日に設定することで、年末年始の帰省時のデータが取得できます。

対象のEVスポットは、本来であればできるだけ多くのEVスポットを網羅することで、日本全国のEV車の動きがより鮮明になるかと思いますが、今回は実験的な分析ということで、東名高速道路の下記サービスエリア内のEV充電スポットのみに限定させていただきました。(出典:NEXCO中日本ドライバーズサイト|EV急速充電スタンド設置一覧およびサービス内容

  • EXPASA海老名(上り)
  • EXPASA海老名(下り)
  • 鮎沢PA(上り)
  • 鮎沢PA(下り)
  • EXPASA足柄(上り)
  • EXPASA足柄(下り)
  • EXPASA富士川(上り)
  • 富士川SA(下り)
  • 日本坂PA(上り)
  • 日本坂PA(下り)
  • 牧之原SA(上り)
  • 牧之原SA(下り)
  • EXPASA浜名湖(上り)
  • EXPASA浜名湖(下り)

よって、分析後に取得されるデータは、上記PASA内の充電スポットに立ち寄った前後24時間の走行中のEV車の経路が日本全国に可視化されることになります。

分析結果

上記分析を行った結果を地図上にプロットするとこのようになりました。

当たり前ですが、主に東名高速道路のSAPAが分析対象エリアで、その地点から前後24時間時間の動きを追っているので、主に東名高速道路上に車の走行軌跡が多いことがわかります。

東名高速道路だけでなく、東京から名古屋を超えて近畿地方軌跡が伸びている(または反対に近畿地方から東名高速道路を使って関東に来ている軌跡が伸びている)ことがわかります。

今回はより地域を絞って、特に関東エリアで東名高速道路を降りたEV車がどのあたりを走行しているかズームインしてみます。首都高やジャンクションがあるところに走行軌跡が見れることは当たり前なので、主要道路も一緒にマッピングしました。

EV車の走行軌跡を主要道路へマッピング

EV車の走行軌跡の密度を3次元(高さ)に可視化

詳細な分析は必要ですが、一見して主要道路以外のEV走行軌跡を見てみると、主要な都市(東京駅・新宿・船橋などにも十分な軌跡は見られるなか、東京ディズニーリゾートや羽田空港などの場所でも確認できました。

主要道路以外の居住地でみると、特に城南エリアでは全体的にEV車が走行した軌跡がみられ、東京都西部の小金井や三鷹などでもEV車が走行している軌跡が見られます。

逆に、東京都内では練馬区周辺、城東エリアの道路以外での軌跡はあまり見られませんでした。

繰り返しになりますが、今回の分析は試験的に東名高速道路のPASAにあるEV充電スポットに立ち寄ったEV車だけを対象としているため、かなり隔たりがある結果になります。

より網羅的にEV車の走行実態を調べるのであれば、エリア全体の主要EV充電スポットを分析対象として網羅すべきだと思います。

しかし分析手法としては実際にデータが取得できることがわかりましたので、日本のEV車の走行実態をある程度把握するには有効な手段ではないでしょうか?

また、今回は解析結果のヒートマップ解像度を100mx100mとして、より広範囲の実態を把握しようとしていますが、その解像度はより細かく修正することも可能です。

より細かい解像度で結果を出力したマップの例

細かい解像度で結果を検証することで、EV車充電スポットが必要な適切なエリアや道路選定材料に活用できるのではないかと考えております。

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