国境地帯に展開されているトラックの台数を把握し、爆撃機の飛行が急増した時にアラートを受け取ることが可能に。
ロシアがウクライナとの国境付近に展開しているジェット機や貨物輸送機などの軍用航空機は、一体どれほどの数なのでしょうか?この種の質問に答えるためには、分析担当者を集め、衛星写真を詳細に調べて特定の対象物を見つけ、分類するという、多大な作業が必要です。しかし、データ分析企業、Orbital Insight(オービタルインサイト)が開発した新たなツールにより、この状況が一変する可能性があります。
マルチクラス物体検出アルゴリズムを利用すれば、広範囲の軍事関連対象物の探知・分類が可能になり、衛星写真を撮影できる地域であればどこであっても、配備されている軍隊の増強や通常とは異なる展開などの事象に関するアラートを分析担当者は得ることができます。Orbitalは本日、同社のGO platformの一環であるマルチクラス物体検出アルゴリズムを発表する予定です。
分析担当者には、「対象物すべてを調査するような時間はありません。優先度の最も高い対象物に集中する必要があります。しかし、(この新しいツールにより)、2番目、3番目に優先度の高い対象物のうち、関連性があるかもしれないものにも目を向けられるようになります。」と、Orbital Insightの地理空間アナリスト、パトリック・ポディコは、公表に先立ち述べました。 彼の推計によると、同社は、港や実験施設などのロケーションに加え、世界各地の約8,100の飛行場をモニターしているとのことです。
このアルゴリズムはさまざまな航空機や船舶、あるいは兵器の種類を認識した後、多数の貨物輸送機の飛来や爆撃機・戦闘機の飛行の増加など、各現場で発生した新たな活動や通常とは異なる活動に関して分析担当者にアラートを発することができます。
この情報を他の情報と照合することで有用性がさらに高まります。たとえば、ロシアが単に演習を実施しているだけなのかどうかを判断できない場合に、他の情報がより不穏な事態を示唆していないか検討することができます。
「飛行場の様子だけではなく、補給基地や後方支援活動などの状況も把握できれば、素晴らしいことです」とポディコは説明しました。「物流チェーンに目を向けて、他のサイトでは何が起こっているのか見てみることができます。当社はトラック探知アルゴリズムも開発しました。分析担当者がトラックを探して数える代わりに、補給基地や、もっと国境に近い地域に配置されている施設を手掛かりにして数量を推定し、それに基づきロシアの作戦遂行能力を予測できます。つまり、ロシアは作戦を実行するだけの輸送能力を確保しているか、という質問に対する回答が得られるのです」
この視覚データを、データ取引業者から取得した通話メタデータや船舶から得られる自動識別システム(AIS)データなど、収集可能な他の情報と組み合わせることで分析結果の精度を向上させ、特定の調査結果の信頼性を高めたり、新たな事象を探知したりすることもできます。
「当社は、ダークな船舶追跡アルゴリズムも開発しています。これにより、船舶が搭載しているAISの作動をつけたり消したりしたような場合、その履歴を見ることができます」とポディコは述べました。
現状では、AIに学習させやすいものとそうでないものがあります。単純に、滑走路上のジェット機の写真に比較して、可動式ミサイル発射装置の写真を目にする機会は少ないためです。この差を埋めるために情報関係機関が検討している解決策の一つが、合成データと呼ばれるものです。この手法では、稀にしか入手できない対象物の数少ない写真を基にして、違う角度からの写真や異なる状況下での写真などを合成し、これをアルゴリズムが認識するように学習させます。
Orbitalの国家安全保障プログラムのシニアアドバイザー、ダン・ソラ―は次のように述べています。ミサイルのような、目にすることが少ない対象物については、「そのような対象物が隠されている地域で、たとえば、丘や森林、戦闘拠点や遮蔽物に覆われている場合などでも、探知可能なレベルまでモデルが学習するためには大量の合成データが必要になるでしょう。そして、そのような場合にこそ、合成データの真価が発揮されるのです」
しかしながら、合成データは依然として「初期段階にある」と述べています。