厄介な問題を解明することが、適切なテクノロジーの導入と死角の排除につながります
「この20年間で利用可能なデータ量は爆発的に増加した」という表現は、カテゴリー5のハリケーンが襲来している最中に、「雨がぱらついている」と言うようなものです。この爆発的増加によりビジネスリーダーはかつてないほど大きな財務運営力を手にしていると考える人もいるかもしれません。多過ぎる情報を管理できる、もっといい方法が必要だと主張する人も多分いるでしょう。いずれにしろ、ビジネスリーダーが注力すべき最優先事項とは、テクノロジーの活用により、事業に生じる厄介な問題を解決することです。問題が生じている理由が明確に理解できない間は、現状維持のために時間稼ぎをしているだけです。率直に言うと、自社の事業をしっかりと把握していなければ、事業を自身で制御できていないという思いから逃れられないでしょう。
データの問題を小さく分割する
データのオーバーロードに関しては、どの経営者も様々な対応策を試みています。まず、社内で発生する大量の一次データを整理する必要があります。この一次データは、指紋のように社内の業務の特徴を表すものであり、それ自体の重要性は極めて高いと言えます。一次データには多くの場合、不足や不整合が見られ、正直なところ、事業の全体像を表しているとはとても言えません。なぜこのような事態が生じるのでしょうか?それは、データ管理をどれだけ効率化しても、データを通して見ることができるのは現実世界の一面に過ぎないからです。あらゆる領域のデータを取得し、把握することが不可欠ですが、それで十分なわけではありません。
他方には、第三者データの問題があります。いくつかの理由から、第三者データの問題はさらに重大です。社外のデータは、少なくとも、桁違いに膨大です。また、どの情報に関連性があるのかを見極める必要があります。ビジネスリーダーにとっての第三者データは極めて魅力的です。なぜなら、競争環境、他の消費者、さらには自社の事業に影響を及ぼす外的要因となり得る天候や物流などの情報への扉を開く鍵となるからです。さらに、この種の情報を選び出すことができれば、あるいは、アクセスできるだけでも、一次データに関する問題の解決が容易になります。
何はともあれ、利用可能な整ったデータを取得することは難題です。しかし、魔法の道具を使って、あるいは何らかの方法で、必要なデータを手に入れたと仮定しましょう。さて、次にするべきこととは?テクノロジーの有効性をどのようにして評価しますか?この段階で、厄介な問題を特定することが必要になります。なぜこれが必要なのでしょうか?テクノロジーの活用方法を理解できていなければ、多くの場合、導入時に失敗することになるからです。自社が抱える問題を深く、高度に理解して初めて、どのようなツールを購入すべきか検討する段階に移り、自社のカルチャーに照らして実際に導入可能なプロセスを構築することができるのです。
それでは、厄介な問題に話題を移しましょう
新しいテクノロジーを検討する際に生じる厄介な問題には、4つのタイプがあります。
厄介な問題その1:問題を特定するための人材が不足している
第1の厄介な問題は単純です。テクノロジーがいかに強力でも、問題が生じている場所を解明するのは人間です。マーク・アンドリーセンの「ソフトウェアが世界を飲み込む」という言葉は当を得ており、成功への鍵であると言えるでしょう。しかし、ソフトウェアがこの厄介な問題を解消してくれるわけではありません。ソフトウェアの機能がどれほどすばらしいものであっても、対応できる以上のデータが生成されているのです。より多くのデータに対処するために、より多くのソフトウェアが必要であるのなら、「世界を飲み込むと思われたソフトウェアをデータが窒息させている」という引用が新たな基準になるでしょう。そして、データを管理するソフトウェアを管理できる人材が必要になるという悪循環から、決して逃れることはできないのです。
厄介な問題その2:それが問題だと理解するために必要なデータがない
既に述べたように、一次データを把握するだけでも難題です。どのデータが自社の経営のために最も価値があるのか理解するには、常に変化する状況に向き合う必要があります。幸いにも、外的要因について理解することに関しては、新しい方法が次々に登場しています。「もし夢の中で願うとしたら、自社の事業のどの領域を「見たい」だろうか?」と自問してみてください。望んでいるデータをリストアップすることは、恐らく、もはや夢想ではないのです。しかし、勢いを増す一方のデータの大洪水の中で、事業のあらゆる領域を「見る」ことができると考えるのは愚かなことです。実際にはそんなことは不可能です。 もし十分に「見る」ことができたとしても、今よりもよく「見る」ために絶えず努めなければなりません。
厄介な問題その3:手遅れになるまで問題に気付かない
これは上で取り上げた問題とは異なり、視認性と追跡可能性に関する問題です。自社のバリューチェーン全体をマッピングすることはできますか?致命的なミスが発生する前に、その兆候に気付くことは可能でしょうか?このような混乱がどのように事業に悪影響を及ぼすのかを概念的に視覚化することはできるでしょう。しかし、実際にマッピングする手段をお持ちでしょうか?自社の事業の障害となり得る場所で「見る」ことを可能にする第三者データを特定できなければ、常にリスクを負っていることになります。自社のバリューチェーンの危険性のために、収益が日々、脅かされるのです。私たち皆が、店舗で商品が補充されず空っぽのまま放置されている棚を目にする機会が増えています。このような状況を考えると、打撃を被る前に先手を打つ重要性は、極めて明瞭です。
厄介な問題その4:顧客が望むレベルの透明性を実現できない
顧客が指先1つで得られる情報は増大する一方です。顧客が自社に期待しているものに備え、提供できるよう支援する必要があります。企業の正しい行いという点では、顧客が企業の発表を鵜呑みにしていた時代は終わりました。この情報化時代には、顧客が企業に向けて上げる声はかつてないほど高く、及ぼす力は大きくなっています。顧客が求める透明性の水準は高くなる一方です。この要望に応える方法の1つが、自社がこの要望に真剣に取り組んでいることを示すプロセスの構築です。20年前、自分が口にする食べ物と自然資源の破壊との関連性を少しでも意識している人はほとんどいませんでした。現在のビジネスリーダーとしてのあなたの務めは、収益の成長と消費者の要望の充足を責任ある方法で両立できる、良識のある事業運営がなされていると消費者に確信してもらうことです。
今日の企業は、押し寄せる大量のデータすべてを取捨選択するため、より適切で効率的な方法を求めています。より多くのデータが必要だと言う人は誰もいません。むしろ、データが多過ぎるという不満を耳にします。しかし、より良いデータを求める声の背後には、さらに差し迫った問題が存在します。テクノロジーにより死角を取り除き、見えない問題を浮かび上がらせることができるのか、という問題です。ビジネスリーダーがこの疑問に答えるには、本稿で述べた概念的手法を用いて、あるテクノロジーが自社のプロセスの改善にどの程度適しているのかを検証し、理解する必要があります。問題をより普遍的に探知することができれば、対処すべき問題に応じて新たなテクノロジーを導入することができます。そうすれば、私たちは、ソフトウェアがデータで一杯で、これ以上データを取り入れるのは無理だと誤解している状態から、単にソフトウェアが世界を飲み込んでいるだけの世界に戻れます。
次回のブログでは、事業を新たな視点から見る方法について考察します。次回ブログがアップされるまでに、世界中で精錬業務を行う米国のエネルギー企業によるオービタルインサイトのGO platformの活用事例を、以下のリンクで是非ご一読ください。 この企業はGO platformにより、ライバル企業の50を超える精錬施設をモニタリングし、タイムリーで客観的かつ実際的な知見を得て、精製製品の価格決定に役立てています。
https://orbitalinsight.com/resources/case-studies/orbital-insight-helps-refiners-increase-margins